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がんの患者さんやサバイバーの皆さんを病院内外で支えている専門家の方たちをご紹介するシリーズです。その方たちのことを少しでも身近に感じていただいて、いざという時の頼り先を知っていただきたいと思いご紹介させていただきます。
今回は、がん研有明病院で6年勤務され、今は独立してお仕事をされて、がんと働く応援団の一員としても活躍いただている臨床心理士の宮崎加奈子さんにお話をお伺いいたします。
がんと働く応援団の野北がお話を伺いました。
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<目次>
1.臨床心理士は心のケアの専門家
2.不安≠悪!上手につきあうコツは?
3.本当に困ったら専門家を頼ろう!
4.最後に
【1.臨床心理士は心のケアの専門家】
Q:まず、どうして臨床心理士を目指されたのですか?
宮崎さん(以下「宮」):私がちょうど小学生5年生の時に、いじめられた子の自殺があってそれをまねて自殺が連鎖するという
事件がありました。当時はスクールカウンセラーもいない時代でしたので、心のケアの仕事をしてそういった人たちの力になりたいなと思ったのがきっかけです。自殺する人だけでなく、いじめる側も苦しみがあるのではないかと思いました。
Q:臨床心理士のお仕事はどんなものですか?
宮:心理検査などの専門スキルを使って心の状態を見立ててからカウンセリングをするのが臨床心理士のお仕事です。臨床心理士は、大きな病院では緩和ケアチームにいたり、精神科でドクターと一緒にお仕事をしたり、企業や学校でお仕事をしたり、独立して開業する場合もあります。いずれの場合も心のケアの専門家として患者さんに接しています。
私は、がん研での勤務が長いのでがん患者さんのご相談を主にお受けすることが多く、独立した今でも同様です。
Q:心のケアに関してはよくカウンセラーという言葉を聞くように思うのですが、どう違うのですか?
宮カウンセラーは「相談役」という意味なので広義には同じです。心のカウンセリングを行うための資格がいくつかあって、日本では、「臨床心理士」「公認心理師」「産業カウンセラー」などの資格が存在します。そのなかで「臨床心理士」は歴史が長く、資格取得まで指定大学院での講義や実習、試験など基盤がしっかりしていることから今のところ、公的に一番信頼度が高い心理系資格となっています。2年前に初の心理系国家資格である「公認心理師」が誕生したので徐々にそちらの方の認知度が高くなると思います。
Q:がん患者さんからのご相談にはどのようなものが多いのですか?
宮:ご相談に来られる方のケースは本当に様々で一概には言えないのですが、治療中に薬の副作用などで気分が落ち込まれる方、治療が一段落した後に、かえって不安が大きくなったり、前と同じ生活に戻れないこと、家族とのご関係に関することなどのご相談があります。
【2.不安≠悪!上手につきあうコツは?】
Q: がんの治療には不安がつきものとおもいます。
宮:まず皆さんにご理解いただきたいのは、「不安≠悪」、ということなんです。「不安がある事=メンタルが弱い」と思われている方が多いのですが実際は違います。「メンタルの力=不安を抱える力があるかないか」なんです。不安がある事は自然なことで、泣いたりすることも抱える力を高めることなので大事なことなんです。逆に、不安がある自分はダメ、早く何とかしなくちゃ、変えなくちゃと思い詰めてしまうと、うまくいかなくなってしまいます。
Q:なるほど、不安は悪いことではないんですね。でも不安で不安でしょうがない時はどう対処すればいいのでしょう?
宮:まず「今のことに集中する時間を作る」ことです。最初は難しいと思いますが少しずつでいいのです。例えば、「ごはん食べるときは味わう(味がしなくても)ようにする」「家族の顔をみて食べる」「散歩するときは踏みしめる感覚を感じる」「お布団のあったかさを感じる」といったことで十分です。そういうささいな時間を大事にすることで、問題と少し距離がとれるようになって、先に進めるようになる方が多いです。
Q:お布団のあったかさを感じる時間!いいですね。この考え方はマインドフルネスに似ていますね。
宮:まさにそうです。色々考えすぎて、頭の中がぐるぐる、グルグルしているときがあると思います。そのこと自体は悪いことではないんですよね。おもいっきりグルグルして大丈夫です。そのあと、鎮めたいとき、マインドフルの考え方はとても有効だと思っています。簡単にできることとして、3分間呼吸法がお勧めです。自分の呼吸にだいたい3分間程度意識を向けるだけです。想いがわいてきたら、「これはグルグル思考だな」や「さぁ呼吸に戻ります」とわざと言葉をつけて呼吸に意識を戻すとやりやすいです。
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Q:ほかにもありますか?
宮:はい、「気持ちの波にあわせた生活にする」ことは意外に知られていないけど重要なことです。特に女性はホルモンバランスによっても波があるものですが、病
気そのものや、治療で使っているお薬の影響で、その波が大きくなることがよくあります。多くの人が、その波をなくそうとされるのですが、この波は、環境に適応するために起こっているものなので、「生きている証」なんです。なので気持ちをコントロールしようとするのではなく、波に合わせて生活と行動を変えてほしいのです。ダウンしているときは、充電期。そういう時はやりたくない家事はやらない。怠ける!なんなら紙コップと紙皿で食事をしていただいても結構です。その充電をきちんとやることで、上がっていくことができるんです。アップ期とダウン期の2つのパターンの生活スタイルを作ってしまうのもおすすめです。
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【3. 本当に困ったら専門家を頼ろう!】
Q:不安とうまく付き合うのがコツなんですね。ただ、突然やってくるバットニュースにはどう対応したらいいのでしょう?
宮:バットニュースに対する正しい対応の仕方というものはない、と思います。人間ですもの。特に再発・転移の告知をされた方は本当にお辛い思いをされています。そんな時は寄り添うことが全てです。一緒に崩れ落ちてもいいと思うくらいの気持ちでお話を伺います。ただ皆さん、一回とことんお話されると、数週間後にはご自分なりの納得や希望を見つけられて回復されていかれることが多いです。本当に人に備わっている力はすごいものがあるなと思っています。
逆に、2週間たっても夜眠れない、食欲がない、生活が成り立たないという方は、うつになっている可能性があるので精神科診療をおすすめします。
Q:精神科って、治療も長くてお薬もちょっと怖いなというイメージがあるのですが。
宮:お薬にもいろいろあって、抗がん剤治療の時に処方される吐き気止めと同じものもあります。精神科のドクターのほうが、専門家なので、副作用や依存性をよく理解して処方されるので安心です。とくに治療でステロイド剤を使って眠れない方には、軽いお薬で効果があるので、構えずに来ていただけるのが良いと思います。とくにがん患者の方の場合は、精神疾患があるわけではないので、長期の治療になることは(もちろんケースによりますが)あまりないです。
Q:では、実際に臨床心理士とお話をされたいときはどうしたらよいでしょうか?
宮:まずは皆様の場合は、主治医にご相談いただくのが良いと思います。主治医の方であれば、緩和ケアチームの紹介なども可能ですので。そしてもちろん、独立して開業している臨床心理士もいるのでその場合は自由診療になってしまいますが、そちらをご利用いただくことも可能です。また、がんの方の心のケアは、一般の精神疾患の心のケアと異なるところもあります。がんの専門家にみてほしいというご要望があるときは、腫瘍精神科(サイコオンコロジー)を探していかれることをお勧めします。
【4.最後に】
Q:宮崎さんご自身のストレス解消はどうされていますか?
宮:実は仕事でストレスを感じることはあまりありません。体が疲れることはあるけど、精神的に、というのはないのです。コツは、持ち帰らない。病院を出たら、受けたご相談の個人情報などは全て病院に置いていく、を心がけています。
また、私自身も体調にあわせて気持ちの波があるので、それを感じることが上手になったと思っています。波に合わせて生活を変えると同時に、一時的なストレスもきちんと評価して、対処できそうなら生活を変えない。そうでなければ、仕事以外の嫌なことは一切やめたり、好きな手芸や工作をして小さな達成感を味わってみたりしています、
Q:さすが、上手にストレスを解消されていますね。最後にがん患者の皆さんやサバイバーの皆さんへメッセージありますでしょうか?
宮:みなさんはすでに我慢の多い生活をされているので、「今」の瞬間を大切にして、やらなくちゃいけないことより、「やりたい」ことを少しずつ増やして積み重ねていっていただけたらと思います。今日ここでお話した内容が少しでも皆さんの毎日を楽にする手助けになれたらうれしいです。
どうもありがとうございました!
(聞き手は、がんと働く応援団 野北まどか)
宮崎加奈子さんプロフィール
2016年まで常勤臨床心理士として、がん研究会有明病院にて腫瘍精神科および緩和ケアチームに所属し、がんの患者さま、ご家族、ご遺族の精神面のケアに携わる。
現在は「みやざきカウンセリングオフィス」を開業し、がんに関わる方を対象にカウンセリングを行っている傍ら、東京医科大学病院 緩和医療部 緩和ケアチームに勤務。
その他、東京都スクールカウンセラー、企業カウンセラー、和田秀樹カウンセリングルームのカウンセラーとして勤務。
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